2020/10/13
【論文】当科特定助教の山本伸也の論文 ”Spatiotemporal ATP Dynamics during AKI Predict Renal Prognosis”がJounal of American Society of Nephrology (JASN)誌に掲載されました。
https://jasn.asnjournals.org/content/early/2020/10/05/ASN.2020050580
【研究の概要】
アデノシン三リン酸(ATP)は全ての生物に共通するエネルギー通貨であり、生体内の組織活動に不可欠ですが、これまで生体内のATPを可視化する技術がなかったため、その詳細は謎に包まれていました。今回、柳田素子教授、山本正道准教授、山本伸也特定助教を中心に、「近位尿細管におけるエネルギー動態が、腎予後を決定する」という仮説を立て、細胞内ATP濃度を可視化するFRETバイオセンサーを全身発現させたATP可視化マウスを作成し、世界で初めて、生体腎の時間的・空間的ATP動態を高精度かつリアルタイムに捉えることに成功しました。そして、急性腎障害において近位尿細管のATP濃度が一過性に低下すること、近位尿細管におけるATPの回復度が長期的な腎予後を決定することを明らかにしました。また、低温条件下ではATPの回復度および腎予後が改善することを証明し、移植腎の保管などに用いられる低温療法の理論的根拠を見出しました。
本知見は、腎臓内のATP変動で示されるエネルギー代謝の恒常性破綻が腎予後と密接に関連することを示しており、腎臓病の治療介入の可能性を拓くものです。