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教授からのご挨拶
京都大学医学研究科腎臓内科学のホームページにお越しいただき、ありがとうございます。皆様には日頃より当科をご支援いただき、心より御礼申し上げます。
当科は2011年の設立時より、「腎臓病を治る病気にする」ことと、「腎臓病の総合的診療」を2本の柱にしてまいりました。
慢性腎臓病は今や成人の5人に1人が罹患する高頻度疾患であり、世界的に注目されています。しかしながら、その治療法は他領域から流用されたものが多く、慢性腎臓病の病態理解に基づく新規治療法の開発が待たれます。慢性腎臓病には多彩な病因による疾患が包括される点もその治療法開発を困難にしています。当科では、一見ばらばらに見える慢性腎臓病にもその進行の過程に共通するいくつかの素過程があることに注目し、その素過程を1つ1つ解き明かし、慢性腎臓病の進展機構を解明する研究成果を積み上げ、世界に発信してきました。当科の研究は国際的にも高い評価を受けており、当科で見出したシーズをもとに複数の創薬研究が発展しています。当科は腎臓病の病因に迫る根本的な研究をもとに、腎臓病の謎を解き明かし、「腎臓病を治る病気にする」ことを目指します。
近年は、世界的にも腎臓病診療への注目が高まり、多くの新薬が登場し、様々な角度から腎臓病を治療できる時代がやってまいりました。腎臓は臓器連関の要であるため、腎臓病患者さんは様々な併存症を発症します。1人1人の患者さんの病態を的確に捉え、最も重要かつ喫緊の病態から解決することで、「腎臓病患者さんを総合的に診療する」ことが私達のもう1つの目標です。
当科では血液浄化療法も担当していますが、当院の人工腎臓部(透析室)は国公立病院では最大規模であり、多様な血液浄化を安全に実施しています。加えて、ICUなどのケアユニットでも麻酔科の先生方と緊密に連携し、各種臓器移植や大血管手術の術直後や生まれて間もない新生児患者さんなど、最重症例の血液浄化を安全に遂行しています。加えて、腹膜透析や腎移植にも積極的に取り組んでいます。
また、当科では、腫瘍内科および薬剤部の先生方と緊密に連携し、OncoNephrology(がん患者さんの腎障害と、腎不全患者さんのがん診療を支援する領域)ユニットを設立、がん患者さんの診療に積極的に取り組んでいます。腎不全のために患者さんががん診療を受けられないことがないよう、そして、がん患者さんの腎臓を守り、がん診療を継続できるように支援することがこのユニットの目標です。その一環として、本領域の世界初のガイドラインである「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン」を2022年に統括委員長として改訂し、世界に発信しています。
設立時に7名であった医局員は197名に達し(2025年4月現在)、世界的な臨床家、研究者を多数輩出してまいりました。腎臓病患者さんが増加の一途をたどり、かつ腎臓病診療の範囲が拡大する中、高い専門性をもった優秀な腎臓内科医のニーズは高まるばかりです。これからもこの魅力ある領域に、若く優秀な先生方に参加していただければと願っています。
当科はこれからも、腎臓病の根本的な病態を解明する研究の推進と、最新の知見と病態の深い理解に基づく総合的診療を行うことで、腎臓病患者さんの幸せと腎臓病学の推進に貢献し、「腎臓病を治る病気に」できるよう引き続き努力して参ります。
腎臓内科をめざす若手の先生方へ
腎臓病領域は、未知であった病因が解明されはじめ、多くの新薬が登場し、まさにこれから発展する分野です。また、これまで腎臓内科医が関与してこなかった救急・ICU領域やがん領域でも、Critical care nephrology、OncoNephrologyといった新領域が登場し、腎臓内科医の活躍の場は増えるばかりです。腎臓病領域には、腎炎、ネフローゼといった腎臓固有の疾患から、自己免疫性疾患や糖尿病、高血圧等によって発症する疾患まで多くの疾患が包括されます。その意味で、腎臓内科医はまさに「全身を診る総合内科医」といえます。
さらに腎臓内科医は、「血液浄化」という専門スキルを持って、様々な領域の疾患に貢献することができます。末期腎不全患者さんの診療はもちろんですが、自己免疫性疾患や肝不全、神経内科疾患、炎症性腸疾患、動脈硬化、循環不全、皮膚疾患と、血液浄化の対象患者さんはほぼ全科におよびます。シャントオペやシャントPTA、パーマネントカテーテル留置、腹膜透析チューブ挿入、腎生検など意外に手技が多いのも特徴です。
加えて、研究と臨床の距離が近いのも腎臓内科の特徴です。当科では、其々の臨床経験に基づく疑問を研究で明らかにするBedside to Bench, Bench to Bedsideを実践しており、研究と臨床の双方向性が病態の理解を推進し、よりより診療につながると考えています。私たちは、研究と臨床をともに進めるPhysician scientistsを育成し、腎臓病学の研究、診療の発展に貢献できる次世代のリーダーを育成したいと考えています。
当科では、豊富な症例をもとに、急性腎障害や慢性腎臓病の幅広い症例を担当していただくことができます。透析管理が速やかに身につくのはもちろんのこと、シャント造設やシャントPTA等の手技習得も可能です。豊富な指導医の懇切丁寧な指導のもと、内科専門医、腎臓専門医、透析専門医が取得できます。魅力的な22の関連病院と緊密な連携を取っており、希望する病院で勤務していただくことができます。学会発表も積極的にお勧めしており、専攻医の間に、日本腎臓学会、日本透析医学会などの国内学会はもちろん、アメリカ腎臓学会等、海外の学会でも発表を経験していただけます。
当科は、内科の中でも圧倒的に若い教室員が多い教室ですが、それぞれの意見が反映される民主的な組織作りを心がけています。多様性を重視し、それぞれの背景に応じて、無理のない働き方の中で、やりがいと充実感、笑顔を持って仕事ができる環境を作っています。教室員一人ひとりが幸せで充実した医師生活を送ることが組織として最も重要だと考えています。
これからますます必要になる腎臓内科に、あなたのご参加をお待ちしています。
教授 柳田 素子
教授 柳田 素子:プロフィール
略歴
1994年 京都大学医学部医学科卒業
2001年 京都大学大学院医学研究科修了、博士(医学)
2001年 科学技術振興機構 ERATO柳沢オーファン受容体プロジェクト研究員
2004年 京都大学大学院医学研究科21世紀COE助教授
2007年 京都大学大学院医学研究科キャリアパス形成ユニット講師
2010年 京都大学次世代研究者育成センター「白眉プロジェクト」特定准教授
2011年 京都大学大学院医学研究科腎臓内科学 教授
2013年 American Society of Clinical Investigation, Elected Member
2018年 京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 主任研究者兼任
主な受賞歴
2024年 International Society of Nephrology (ISN) Bywaters Award 2024
2023年 日本腎臓財団 学術賞
2020年 ベルツ賞(2 等賞)
2018年 財団法人石橋由紀子記念基金 第一回石橋由紀子記念賞
2008年 内科学会奨励賞
2005年 日本臨床分子医学会 学術奨励賞
2004年 日本血管生物医学会 Young Investigator Award
2004年 日本腎臓学会 大島賞
発表論文
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